山岳保険・山岳遭難捜索保険のすすめ
山は楽しい反面、危険がたくさん潜んでいます。後遺症が残る大怪我を負ったり、最悪の場合は命を落とすこともあります。2009年7月の「トムラウシ山遭難事故」は記憶に新しいところです。
あってはならない山の事故ですが、残念ながら山の事故を完全になくすことはできません。我々は山の事故に対してどのように備えるべきでしょうか?
この記事では、山岳保険(山岳遭難・捜索保険)について考えます。
ちなみに私は、10年以上前から「日本山岳救助機構(ジロー/JRO)」を利用しています。
山ではどんな事故が発生しているのでしょうか?少し例をあげてみました。
・足を捻挫して自力で下山ができなくなりヘリコプターを要請した。ヘリは民間機だった。
・足を滑らせ谷底に滑落して動けなくなった。ヘリも近づけない険しい谷で山岳救助隊が救助に向かった。
・山で道に迷い携帯で救助を要請した。山岳救助隊と民間ヘリによる捜索が行われた。
・急な天候悪化により体温を奪われ低体温症で歩けなくなりヘリを要請した。
・落石を起こしてしまい運悪く下にいた登山者に当たった。落石を受けた人は亡くなってしまった。
ヘリコプター代、山岳救助隊による捜索作業費、対人損害賠償などの費用はいったいいくらかかるのでしょうか?
では、実際に事故が起きた時の救助費用はどの程度必要なのでしょうか?
・消防・警察・防災ヘリ
無料
・民間(東邦航空・松本営業所)のヘリコプター(1997年1月に起きた事故例より)
チャーター料 約51万円/時間(遭難現場での救助作業料金)
空輸料 約47万円/時間(遭難現場近くのヘリポートまでの回送料)
スタンバイ料 約30万円/件 (通常の物輸作業を中断し現場に向かうための、保証、調整費用)
滞留料 約30万円/時間(現場待機費用(待機が3時間を超える場合)、最大1日2時間分)
夜間滞留料 約7万円/泊 (滞留が夜間に及ぶ場合)
計算例(ヘリによる救助活動が4時間程度で完了した場合):約226万円
・警察・消防団・自衛隊による捜索・救助活動
無料
・民間(北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会)による捜索・救助活動(2012年5月に起きた事故例より)
山岳障害保健掛金 約1万3千円/日×人数
救助隊員手当 約3万5千円/日×人数
危険手当 約5千円/日 ×人数
その他の経費
計算例(救助隊員10名が5日間の捜索・救助を行った場合):約265万円
これらの費用は救助できようができまいが請求され、捜索が難航すればするほど高額になっていきます。
お金が払えないので、なかなかヘリが飛ばないというような悲しいケースもあるようです。
山の中で自分の過失により加害者になってしまった場合の賠償額はどうでしょう?人の命はお金に変えられるものではありませんが、ケースによっては賠償額が数億から数千万円になることは容易に想像できます。
保険に入ったからといって安全が確保されるわけではありませんが、せめて経済的負担を減らして、全力で救助に当たれるようにするというのが山岳保険の目的です。
山岳保険に加入するには、保障内容を把握しましょう。自分の山行スタイルや保障範囲、保障額、掛け金、各種の細かい条件、加入方法などを確認してください。主なポイントを以下にまとめてみました。
・掛け金など:掛け金、掛け金以外に必要な費用は?
・保障額など:上限金額、捜索期間、保障回数は?
・保障内容:死亡・後遺障害、入院保険金、対人賠償費、携行品、救助隊員の手当や保険掛け金、ヘリコプター代などの交通費、消耗品費、宿泊代など
・加入方法:ホームページからオンラインで手軽に申し込み可能か?
・加入条件:加入者条件(入会必須など?)、被保険者条件(保険期間終了時点での年齢など)
・保障対象(山域):日本国内のみか、海外で起こった遭難も保障されるか?
・保障対象(山行スタイル):バリエーション山行、山岳登はん山行(アルパインクライミング、沢登り、冬山などの登攀用具を使用した山行)も保障対象か?
・保障対象(その他):事前の山行届の提出義務、病気などの特殊要因による遭難、二重遭難などの特殊要因でも保障されるのか?
(引用:モンベル | 保険サイト)
2020年5月現在、私たちが加入できる山岳保険を比較してみます。いろいろな会社、団体のいろいろな保険がありますが、私が加入検討した保険を取り上げます。詳しくは各社のホームページ、パンフレットをご覧ください。
比較していると疑問がいろいろ湧いてくるので、詳しくは各団体に問い合わせしてください。
また、記述に間違いがあったらご指摘ください。
商品名 |
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概要 |
ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマーなどの登山用具を使用するものおよびロッククライミング、フリークライミングなどの山岳登はん行程中の事故によるケガなども補償します。 ・保険責任開始時刻(※)は、国内旅行のために住居を出発した時刻に始まり、住居に帰着した時刻または保険期間最終日の午後12時(24時)のいずれか早い方をもって終了します。 ・保険期間(保険のご契約期間)は、旅行開始日より数えます。(初日算入) ・保険期間(保険のご契約期間)が7泊8日以上の旅行はご加入いただけません。 ・満期時の年齢が90歳以上の方はご加入いただけません。 |
契約期間 |
短期契約(日帰りから6泊7日) |
掛け金(例) |
1,000円(1泊2日まで)、プランSD12:2,000円(1泊2日まで)、1,500円(6泊7日まで)、2,500円(6泊7日まで)など |
保障内容 (プランSD12:2,000円の場合) |
死亡・後遺障害(261.6万円)、入院保険金(2,000円/日)、対人賠償費(1億円)、救援者費用等補償(300万円限度)、遭難捜索費用(100万円限度) |
加入方法 |
ホームページからオンライン申し込み可能 |
加入条件 |
モンベルメイトへの加入 |
保障対象(山域) |
日本国内での遭難のみ |
保障対象(山行スタイル) |
ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマーなどの登山用具を使用するものおよびロッククライミング、フリークライミングなどの山岳登はん行程中の事故によるケガなども補償します。 |
その他 |
モンベル野あそび保険(国内旅行傷害保険)もあります |
商品名 |
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概要 |
あなたのアウトドアライフにあわせて、3つのプラン、9のコースをご用意しました。お仕事中の事故を除き私生活のみを補償する「就業中対象外」と、就業中か否かを問わず補償する「24時間補償」があります。 ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマーなどの登山用具を使用するものおよびロッククライミング、フリークライミングなどの山岳登はん行程中の事故によるケガなども補償します。 山岳保険(運動等危険補償特約付傷害総合保険) 【安心プランのみセット】 ・地震・噴火・津波危険補償特約 ・入院保険金および手術保険金支払対象期間延長特約(1,000日用) ・通院保険金支払対象期間延長特約(1,000日用) 【全てのプランにセット】 ・賠償事故の解決に関する特約 【就業中対象外のみセット】 ・就業中の危険補償対象外特約 |
契約期間 |
長期契約(1年から5年) |
掛け金(例) |
安心プランD106:26,010円(1年、就業中対象外)、スタンダードプランE105:15,780円(1年、就業中対象外)、シンプルプランD024:6,110円(1年、就業中対象外)など |
保障内容 |
死亡・後遺障害(2,000~5万円)、個人賠償責任補償(1億円)、救援者費用等補償(500万円)、遭難捜索費用(100万円)、遭難捜索追加費用(30万円) |
加入方法 |
ホームページからオンライン申し込み可能 |
加入条件 |
モンベルメイトへの加入 |
保障範囲(山域) |
日本国内での遭難のみ |
保障範囲(山行スタイル) |
ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマーなどの登山用具を使用するものおよびロッククライミング、フリークライミングなどの山岳登はん行程中の事故によるケガなども補償します。 |
その他 |
モンベル野あそび保険(国内旅行傷害保険)もあります |
商品名 |
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概要 |
新しい山岳遭難対策制度「日本山岳救助機構会員制度(略称「jRO(ジロー)」)」は、山を愛する方々の相互扶助の精神にもとづく新しい会員制度で、日本山岳救助機構合同会社によって運営されます。 ・山岳遭難捜索・救助費用カバレージ制度により、捜索・救助費用が550万円まで補てんされます 会員が遭難に遭遇し、会員が捜索・救助費用を負担する場合、その費用実費を1会員1会員期間あたり550万円を限度に補てんいたします ・会員の要請による救助隊派遣の斡旋、用具貸出などが利用できます(都岳連等と提携)。 捜索が長引く時、あるいは捜索困難な場所等の時、経験に富む救助隊の派遣の斡旋が受けられます。また、ビーコン、スコップ、無線機等救助用具の貸出しが受けられます ・遭難防止のための講習会、講演会、コンサルが受けられます(都岳連等と提携) 大学専門医、救急救命士、プロガイドなどによる、遭難しないための対策、救急法、搬送法などの講習会や講演会を受けられます。また、山岳会等での遭難対策や、遭難が起きてしまったときの山岳会や家族の対応等のコンサルティングをおこないます |
契約期間 |
長期契約(1年単位) |
掛け金(例) |
会費:毎年2,000円(団体・家族割引きあり)+事後分担金:750円~1,500円の間の見込み(年度終了後算出するので、確定していません。) |
保障内容 |
550万円までの実費(捜索・救助費用、遺体搬送費用、関係者現場駆けつけ費用)、 |
加入方法 |
ホームページからオンライン申し込み可能 |
加入条件 |
日本山岳救助機構への入会 初年度のみ入会金:2,000円(団体・家族割引きあり) |
保障範囲(山域) |
日本国内での遭難のみ 病気による遭難 : 山行中の発病は100%補てん、 既往症、持病は削減あり 二重遭難、共同遭難も対象 |
保障範囲(山行スタイル) |
登山 、ハイキング、キャンピング、縦走、岩登り、アルパインクライミング、沢登り、雪山、アイスクライミング、トレイルランニング、フリークライミング、スポーツクライミング、ボルダリング、山スキー&スノーボード 、キャニオニング、ケイビング、 マウンテンバイク、山菜採り・茸狩り、渓流つり |
保障範囲(その他) |
商品名 |
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概要 |
山や自然が好きな人の相互扶助と自立をめざす仲間の集まり、それが、「日本山岳協会山岳共済会」です。山岳共済会は安全登山をめざし、登山技術の向上や普及、遭難予防と対策など各種の事業を支援しております。山岳共済会は日本の山岳遭難・捜索保険の草分けで、5万人の会員を持つ最大級の山岳共済です。 |
契約期間 |
保険期間は2020年4月1日〜2021年4月1日までの1年間です。所定の日付での中途加入も受け付けております。 |
掛け金など |
4,450円(登山コース/タイプS)、6,450円(ハイキングコース/タイプⅡ)、3,730円(スポーツクライミングコース/CL3)など |
保障内容 |
死亡・後遺障害(100万円)、遭難捜索費用(100万円)、賠償責任(1億円) |
加入方法 |
・申込方法1:資料を請求頂いて書面でのお申込み ・申込方法2:WEBからのお申込み(お支払方法はクレジットカードのみ) |
加入条件 |
・日本山岳協会山岳共済会への入会(入会金無料) ・年会費:1000円(高校生及び18歳未満は500円) |
保障範囲(山域) |
日本国内での遭難のみ |
保障範囲(山行スタイル) |
・「登山コース」は、ピッケル、アイゼン、ザイル等の登山用具を使用する登山中(フリークライミングを含むロッククライミング、冬山登山等を含みます。)の事故が対象です。一方、「ハイキングコース」は前記の登山用具を使用しない登山(ハイキング等)中の事故が対象です。 ・「ハイキングコース」は屋内でのクライミング、屋外の人工壁におけるクライミングも補償します。詳しくはパンフレットをご請求のうえ、ご確認ください。 ・「ハイキングコース」、「登山コース」の両コースへご加入いただけます。 |
保障範囲(その他) |
トレイルランニング愛好者向けのトレランコースもあります |
さあ、山岳保険に入ろう。o(^▽^)o
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